閑散期に空室になってしまって、なかなか入居にいたらない。
そんなオーナー向けのセミナーを視聴した。
このセミナーは次のような人を対象にしている。
- 空室状態の物件を持っている人
- なかなか入居率が上がらず悩んでいる人
- いつか来る空室に前もって備えておきたい人
- 物件購入前に入居率が高い物件の条件を知りたい人
スピーカーは、管理戸数7,230戸で東京都23区の物件稼働率95%オーバーの株式会社アートアベニューで、賃貸物件の募集管理などのサポートをされている刈込氏。
コロナ前後の稼働率
首都圏全体での同社の賃貸物件の稼働率は、平均で次の通り。
コロナ前(2019年):97.56%
コロナ後(2021年):96.07%
特に都心に行けば行くほど稼働率が下がる傾向にあり、逆に郊外は稼働率が好調らしい。
| エリア | コロナ前後の入居率の差(同社比) |
|---|---|
| 全体 | ▲1.49% |
| 東京都 | ▲2.34% |
| 23区 | ▲2.44% |
| 都下 | ▲1.77% |
| 神奈川 | 0.71% |
| 千葉 | 0.11% |
| 埼玉 | 0.18% |
さらに都内への流入は10分の1に落ち込んでいる。
(総務省「住民基本台帳人口移動報告」より)
他のセミナーや自分で調べていた結果と違う内容だったので、少し調べ直してみた。
上のグラフは、22年2月(左の棒)、21年2月(右)を比較してみたもの。
東京、埼玉、千葉、神奈川、いずれも転入数はやや下がっているものの、大きく落ち込んでいるようには見えない。
ちなみに、国籍は日本人で他県からの移動のみに絞っている。
この後の話題にあるけど、国外需要の取り込みが話にあった。
そこの数字も含めてみると、ということだったのかもしれない。
また、世代別だと20代、30代の転入超過数の現象が目立つとのこと。
(転入超過数:転入者数から転出者数を差し引いた数)
入居者ニーズの変化
入居者のニーズに合った物件の提供をしよう、ということで。
コロナ禍でニーズが増えた設備ランキングがこちら。
| 順位 | 設備 |
|---|---|
| 1 | インターネット無料 |
| 2 | 高速インターネット |
| 3 | 宅配ボックス |
| 4 | テレビモニター付きインターホン |
| 5 | 遮音性の高い窓 |
| 6 | BS、CSアンテナ |
| 7 | 浴室換気乾燥機 |
| 8 | エントランスのオートロック |
| 9 | 防犯カメラ |
| 10 | 24時間利用可能ごみ置き場 |
さらに単身者向けとファミリー向け物件で「これがないと契約されない」設備がある。
※変動の( )内は変動前の順位
| 順位 | 変動 | 設備 |
|---|---|---|
| 1 | → | 室内洗濯機置場 |
| 2 | → | モニター付きインターホン |
| 3 | → | インターネット無料 |
| 4 | ↑(5) | 洗浄機能付き便座 |
| 5 | ↓(4) | 独立洗面台 |
| 6 | → | エントランスのオートロック |
| 7 | ↑(8) | 宅配ボックス |
| 8 | ↓(6) | 備え付け照明 |
| 9 | → | 高速インターネット |
| 10 | ↓(9) | ガスコンロ(2口/3口) |
| 順位 | 変動 | 設備 |
|---|---|---|
| 1 | ↑(4) | モニター付きインターホン |
| 2 | ↓(1) | 室内洗濯機置場 |
| 3 | ↓(2) | 独立洗面台 |
| 4 | ↓(3) | 追い焚き機能 |
| 5 | → | 洗浄機能付き便座 |
| 6 | → | インターネット無料 |
| 7 | → | システムキッチン |
| 8 | → | ガスコンロ(2口/3口) |
| 9 | → | エントランスのオートロック |
| 10 | ↑(13) | 浴室換気乾燥機 |
需要期の大型連休前に、ニーズの高い(または必須の)設備の見直しを勧められていた。
この辺りは、新しく物件を購入する際にもチェックしておきたい事項かも。
物件の付加価値で空室対策
入居者ニーズの中で、対策が割と簡単で物件の付加価値にもなる対策をいくつか紹介された。
高速インターネット
コロナ禍で自宅でネットを利用する割合が高くなったこともあって、ネット回線が遅いと感じるケースが多いらしい。
特に集合住宅の場合は、1つの回線を入居世帯で共有しているので、すぐに回線の上限に達してしまうそう。
一番の対策は、各戸へ直接、光回線を引いてしまうこと。
工事費用もそれほど高額にはならずに、入居者ニーズに応えることができる。
宅配ボックス
コロナ前は、総戸数の20%の宅配ボックスが必要としていた。
コロナ後は、総戸数の30%(最低2戸は必要)を推奨している。
これも宅配サービスの需要が高まったからなのだろう。
個数が足りないとクレームになることもあるらしい。
防音対策
コロナ禍で自宅時間が増えたことで、生活音その他の苦情や問い合わせが増えている。
これについては、具体的な対応策は紹介されなかったような気がする。
単純に遮音材、防音材を追加する…とかだろうか?
ワークスペースの確保
このセミナーで面白いと思ったもの1つ目。
折りたたみのワークスペースで、在宅勤務の需要に応えるというもの。
これは確かに安価で対応できるし、仮に自分で賃貸を借りることを想像すると、うれしい設備では?と思った。

ファミリー向け物件なら、壁一面の収納棚とワークスペースの組み合わせもオススメらしい。
現地確認
内覧前にちょっとしたゴミを拾うだけでも、かなり印象が違う。
確かに、自分で内覧する場合も、少しゴミが落ちているだけでも良い感じはしないよね。
(これは基本的なことなんだろうけど)
その他、屋外階段などの高圧洗浄:4~5万円・回(1日)。
除草なども安価でできる対策として紹介されていた。


仕様や設備の変更
閑散期に空室になったら、原状回復だけではなく、バリューアップを狙って対策する。
壁紙1面をアクセントクロスへ変更したり、間取りを変更する。


間取りの変更は、そこそこ費用がかかりそうだ。
アクセントクロスなら安価だし、確かに1面の壁紙が変わるだけで部屋の印象は大きく違って見えるよね。
入居後のイメージが膨らむように、募集写真では家具を配置したものを使うと申込率が変わるそう。
VRで写真と合成するサービスもあるそうで、写真1枚あたり2~3千円でつくれるとのこと。
家具のサイズ感が正しくないとクレームになる場合もあるので、その点は注意が必要だ。
家具レンタルなどもできて、こちらは数万円程度。
実際に3ヶ月間、空室が続いた物件で家具を配置した写真に切り替えたところ2週間で申込があったケースもあったとのこと。
大画面のある暮らしを提案
このセミナーでおもしろいと思ったもの2つ目。
プロジェクターを設置して、大画面のある暮らしを提案するというもの。
これは確かにいいと思う。
テレビ離れはあるものの、映画やゲームを大画面で楽しめるのは、ちょっとした憧れじゃないだろうか。
「ポップインアラジン」という商品なら、天井に照明として設置するので場所も取らない。


女性に人気の入浴アイテム
このセミナーでおもしろいと思ったもの3つ目。
ReFaのシャワーヘッド。
正直、40才過ぎのオジサン脳からは出ない発想だ?
調べてみると、今一番人気と言っても良いシャワーヘッドらしい。
実際、こういうちょっとしたところで付加価値って感じられる気がする。
募集条件で空室対策
次は募集条件で競合に差をつける方法が紹介された。
「あらたしいニーズを取り込む」ことが狙いだ。
LGBT(セクシャルマイノリティ)を取り込む
単身者向けではなく、ファミリー向け物件に限られる。
例えば、SUUMOでLGBT対応物件に条件を絞る。
都内では約44万件から2万件程度まで物件が絞られる。
これはつまり、競合が94.5%カットしているのと同じ。
今後、対応する物件も増えてくるかもだけど、今はまさにブルーオーシャンという訳だ。

高齢者層を取り込む
見守りサービスや、事故が発生した際の保険(原状回復・下がってしまった家賃分の保証など)があるので、そういった面のリクスは担保できるとのこと。
また、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で老衰、病死(自然死)は告知義務がなく、いわゆる事故物件にはならないそうだ。
ただし、入居者から確認された場合は、ちゃんと回答する義務がある。
ちなみに、SUUMOで「高齢者歓迎」を条件にして検索すると、LGBT対応物件よりさらに物件数が絞られるようだ(地域差はあるかも)。
外国籍を取り込む
22年3月から入国緩和に伴い、人数制限や入国時の隔離期間が短縮された。
海外審査ができる管理会社とそうでない会社があるので、事前に確認が必要とのこと。
個人的には、LGBTや高齢者層と違って、ちょっとリスクが高い気がする。

SUUMOには外国籍を条件に指定することはできなかった。
CHINTAIでは外国人向け賃貸物件として検索できた。
高田馬場に日本語学校が集まっているので、この辺りは狙い目らしい。
その他の条件緩和
次に挙げる順に条件変更しやすいものになる。
- 事務所可
- 2人入居可
- 子供入居可
- ペット可
条件変更する場合は、既存の入居者への配慮が必要なので要注意!
キャンペーンで空室対策
2~3、実際に実施されたキャンペーンの失敗例や成功例(と言えるものはなかった気も)が紹介された。
基本的にキャンペーンは上手くいかないような印象だったけど、よく確認して考えないといけないポイントとしては次の4点。
- どこの仲介を利用するのか
- どの担当者なのか
- 管理会社はどこの仲介とよく付き合っているのか
- 特定仲介を対象にキャンペーンを実施
まとめ
賃貸物件にどうやって付加価値をつけて、競合と差をつけるか?という内容のセミナーだった。
具体的な対応策も紹介されて、大変興味深く最後まで視聴できた。
冒頭でも書いたとおり、すでに賃貸物件を所有している人以外にも、これから物件の購入をしようと考えている人も、付加価値になる条件を満たしているか?(または、付加価値がつけられる物件か?)にも注目してみると良いかもしれない。
参考
最後に、反響数~内見数~申込数をちゃんと数字で把握しようという話と、ITANDI BBやイエプラのような、コロナ後に出てきたサービスの活用についても紹介されていたので参考まで。








